肝細胞癌、胆管癌、膵癌、膵IPMNの外科手術標本を対象として、①疾患概念の整理、②分子生物学的解析を用いた発癌解明および③腫瘍進展メカニズムの解明、④新たな治療標的分子の解明を目指した研究を行っている。
肝細胞癌切除88例(5cm以下の単純結節型および単結節周囲増殖型)において、被膜浸潤(fc-inf)を“癌が被膜を破り被膜外にとびだすもの”と定義したところ、被膜浸潤が有意な予後不良因子であることを明らかにした(図1)(Iguchi. Am J Surg Pathol 2008 in press)。また、小型肝細胞癌(3cm以下)で胆管癌様の分化を示すものは予後不良であること(Aishima. Am J Surg Pathol 2007)、肝細胞癌に対するTACE施行例ではTACE未施行例に比べCK19陽性率が高く、CK14陽性率も高い傾向にあった(Nishihara. J Gastroenterol Hepatol 2008 in press)。
肝内胆管癌87例(5cm以下の浸潤癌)において肉眼像と組織像によって肝門型と末梢型に分類した結果、肝門型は胆管異型上皮を周囲に伴い、グリソン鞘に沿った浸潤様式を示しやすいのに対し、末梢型は肝炎・肝硬変を背景として発生し、グリソン鞘を腫瘍内に取り込みながら発育しやすく、肝門型は末梢型に比べ予後不良であった(図2)(Aishima. Am J Surg Pathol 2007)。
IPMNにおけるアクチン結合蛋白であるFascinの発現は、組織異型度によりAdenoma、Boderline、Carcinomaと分類したところAdenomaに比べ、BorderlineとCarcinomaで高く、FascinはIPMNの発育に関わることを示した(図3)(Yamaguchi. Mod Pathol 2007)。IPMN発生の初期段階でDNAダメージチェックポイント経路が活性化しており、浸潤癌に進行する過程でこの経路が減弱していることを明らかにした(Miyasaka. Clin Cancer Res 2007)。